都市における限られた土地を有効に利用しつつ,良好な居住水準の住宅供給を
促進することが,重要な政策課題となってる。    
 このような見地から、タウンハウスや中高層共同住宅は今後もますます供給さ
れる必要があるが、その維持管理や更新・あるいは居住者間の近隣関係などに多
くの問題をかかえ,資産価値の保全や人間的環境育成の面で,それが必ずしも望
ましく運営されているとはいい難いのが現状である。
 このような状況の中で,コーポラティプ・ハウジングは居住者が建設計画の当
初から直接参加して主体的に進める共同住宅づくりであることから,愛着心と協
同意識に支えられて入居後の維持管理やコミュニティ形成が,通常の共同住宅に
比して優れている点が高く評価されている。このことはここ1983年来全国各地で
建設されたコーポラティブ住宅の実体調査によって明らかにされている。
 昭和59年の年初めから施行される改正区分所有法は,維持管理や更新等に係
る諸問題を改善していく有効な法律として機能することが期待されるが,これは
単に通常のマンショソ等の共同住宅に対してだけでなく,コーポラティプ住宅の
今後の発展にとっても、大きな役割を果たすことになろう。なぜならば,多数決
原理の導入や管理組合法人化など「個」と「全体」の対立を調和解決させる仕組
みを改正法は備えており,共同体の運営手法としてかなりの進歩が見られるから
である。今までコーポラティプ方式が法によらずに実践してきた手法や,待ち望
んでいた法人化問題などが法的に整備されたことにより,より円滑にコーポラテ
ィプ方式が運営可能となり,また通常のマソンョン等は現状からよりコーポラテ
ィプ方式へ接近せざるを得なくなることから,コーポラティプ方式への理解が深
まり、ひいてはコーポラティプ住宅への参加意識が高まると期待されるのである。
 しかしながらコ−ポラティプといえども,わが国でほ区分所有型で行われてお
り,欧米諸国で主流となっている共有型とは基本的に異なる。区分所有型が「専
有」と「共用」の二元性を前提として成立しているのに対して,共有型はすべて
が「共有」で住戸には「占用」の権利が与えられるのである。この意味で一元化
された所有形式であることから,維持管理等が区分所有型に比してはるかに円滑
に行えることは明らかであろう。
 この意味から,わが国でも今後共有型のコーポラティプを実現していくことは,
共同住宅という重要な社会的遺産の健全な保全・更新の観点から必需なことと思
われる。

昭和58年 コウプ住宅推進協議会より


1  コーポラティブ方式の定義と所有形式


   コ-ボラティプ・ハウジング(Co−operative Housing,以下略してCHとい
  う)とは,協同組合の原則に基づいて結成された住宅組合が,組合員自身のた
  めに,住宅とその環境を供給(ないし管理)するものであり, 良好な物的及
  び社会的環境の形成をめざして運営されるものである。   これはCHに関し
  て一般的に適用される定義であるが,現在世界各国にはさまざまな種類のCH
  が存在しており,種類ごとに定義の内容は少しずつ異なっている。たとえばわ
  が国のCHは,区分所有を前提として行われているが, これに対して建設省が
  定義づけた内容は,「自ら居住するために住宅を建設しようとする者が,組合
  を結成し,共同して事業計画を定め,土地の取得,建物の設計,工事発注その
  他の業務を行い,住宅を取得し,管理していく方式」( 昭和53年3月,建設
  省住宅局コ−ポラティプ方式研究委員会)となっている。
    CHにはその所有形式から大別して                              _
   @ わが国で現在行われている区分所有型
   A 欧米諸国で主流を占めている共有型
   B 最近イギリス等で行われはじめた第三者所有型(これは公的賃貸住宅の
      管理の主要部分を,住民が結成する管理協同組合へ委託するもの)
  などがある。
 「大都市おけるコミュニティ形成に関する研究Uコーポラティプ方式についての
  総合評価ー」p32,((財)日本住宅総合センター調査研究リポートNO80025参照)
   前に述べたように,区分所有型は専有と共用の二元構成である のに対して
  共有型は土地建物ともに所有が組合に一元化されており,この点から維持管理が
  区分所有型に比較して円滑に行える利点がある。

2  共有型の特徴


   共有型のCHは,もっとも歴史が古くまた世界全体を見渡して数の多い主流
  的なコーポラタィプ住宅の形態である。
   これは法人格をもった住宅共同組合が,土地・建物の所有権を留保し,組合
  員である居住者は組合から各住戸の居住権を保証されている。これを形式的に
  みれは一種の賃貸住宅であるが,通常の賃貸と異なるのは借家人である居住者
  が,所有者の一員でもあるという点である。なぜならば居住者は必ず組合員で
  あり,組合員は組合が所有する土地・建物の権利者の一員に他ならないからで
  ある。                                               
 このように各自が所有者の一員であるという共有意識を土台にして,組合運
営と維持・修繕・建替え等の物的管理は,組合員一人一票の議決権を行使して
民主的に行われる。またこのような民主的運営を基盤にして親密なコミュニテ
ィ形成が計られていく。この点で共有型CHは,共同住宅という社会資本を健
全な形で保全していく上で有効な役割を果たし,加えて良好な社会的・人間的
環境を形成するものとして,欧米諸国では高く評価され,公的補助によるさま
ざまの促進策が与えられているのである。
 共有型CHには大別して二つのタイプがある。一つは「共有使用権型」とい
われ,もう一つは「共有所有権型」とよばれるものである。両者の相違は主と
して組合脱退時の条件の差に見られる。
 「共有使用権型」は西ドイツ・カナダ等で多く行われており,脱退の場合に
は組合加入時に納入した出資金のみ(ないしそれに多少の利子が付く程度)が
組合から返済される。
 「共有所有権型」の場合は,組合へ納入する毎月の住居費(家賃)の中に含
まれている建築費借入金への返済分相当額が当初の出資金に付加して返済され
るか,または時価評価額に近い額で返済される。したがって居住しながら個人
的な資産形成もある程度可能となる方式である(詳細については「大都市にお
けるコミュニティ形成に関する研究U ーコーポラティプ方式についての総合
評価ー」 P35. 参照)。
 わが国で共有型の可能性を考える場合,後者の「共有所有権型」の方がなじ
み易いといえよう。

コープ住宅推進協議会
共有型コープの評価とその実現性について より