なぜ相互補助なのか



1 社会的背景

現在の日本では、世界に類を見ないほどの急激な高齢化社会のうねりが生じています。この大きな変化は、昭和30年頃から始まっています。この頃、戦後の廃墟の中から奇跡的な復興を遂げた日本は、工業社会への道を歩みました。そして、都市への人口集中の結果、日本古来の家族構成が崩壊して核家族を生みだしています。平均寿命が急速に延びだし、一生のライフスタイルが変化していわゆる「第2の人生」が注目されたのも、ちょうどこの頃に当たります。

 
 この急激な人口構成は、現在の私たちのわずか2世代の間でなされようとしています。これは、世界に前例のない日本の特徴です。変化の期間を外国と比べてみると、なんとアメリカの35%、フランスの23%に当たる短期間で高齢化を迎えるのです。


 こうした「長寿社会」への進展によって、健康志向、安全志向、学習志向が強められ、これらのニーズに対応して新たなサービス業が誕生しています。これらを包括するいわゆるシルバー市場は、2000年には140兆円になるという推計があ社会背景ります。この中でも特に、住生活と健康に関する市場の成長率が最も高く、年平均12%以上の伸びを示すと予想されています。「長寿社会」への対応の中で、健康への配慮が込められた住居がこれからの住宅産業の核心をなしていくでしょう。

2 長寿社会の居住施設の問題点

 このような社会的背景のもとに、近年様々な試みが行われています。最も初期から組織だった対応計画は、「老人ホーム」の建設です。老人ホームの需要は、65歳以上の高齢人口の3%といわれていますが、現在までの建設数を見るとその需要に追いつくのはなんと2045年になってしまいます。公社公団でも高齢者対応住宅の開発や、二世帯住宅の開発などが試みられる様になりました。

一方では、高齢者にとって最も大事なことは長く生活してきた地域とのコミュニケーションの持続であるという発想のもとに、気のあった人達とコーポラティブ方式の共同住宅を作って住む試みもなされ、住み慣れた地域のコミュニティのなかで暮らすことが良いとされています。


 急激な高齢化社会への変化の中では、もはや公的機関だけに頼っていたのではいよいよ住づらい世の中になってしまうことでしょう。私たちが自ら、来るべき「長寿社会」に取り組んでいく義務があるのではないのでしょうか。


 そのためには、日本社会より消えてしまった相互補助の精神を取り戻し、安心して住めるアメニティ空間を作り上げなければなりません

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